歌のかたち
CDやレコード、カセットテープ。歌はいろんな「かたち」で聴き手の元にやってきます。歌だけでなく、ジャケットや歌詞カードのデザイン、素材、手触りにも目を向けてみると、つくり手のこだわりがもっと感じ取れるものです。インターネットでも手軽に歌を聴くことができるこの時代、それでも実物を手にしてよかったと感じる歌の「かたち」について目を向けてみるコラムです。
第3回 イ・ランと柴田聡子『ランナウェイ』
今からちょうど3年前くらいだったと思う。花京院にある「ボタン」という本屋をふらりと訪れ、イ・ランと柴田聡子の『ランナウェイ』というCDを買った。私はこの曲を、雪がちらつく静かな午後、早くに傾いた陽の光がすうっと射して、柔らかくきらきら反射する風景を思い浮かべながら聴いている。買ったのが、そんな冬の時期だったからかもしれない。
そんな美しい楽曲でありながらも、このCDのパッケージはかなり面白い。ボリュームのあるブックレットと、2人の写真がレンチキュラーカードになってディスクケースに挟み込まれている。レンチキュラーカードとは、カードの角度を変えると違う写真が見えてくるカード(子ども向けのチョコレート菓子なんかについている、あれ)。収録されている楽曲は美しさもありながら、ユーモアもたっぷり。楽曲が生まれた時のことやイ・ランと柴田聡子の友情も一緒に、ぎゅっと綴じ込まれた素晴らしい作品。
サブスクリプションで音楽を聴く時には、ジャケット画像は1枚のメインビジュアルのみ。実物のパッケージがこんなにも楽しいCDに出会ってしまったから、やはりCDが一番だなあと、深く実感するのであった。
▷『ランナウェイ』の視聴はこちら
イ・ランと柴田聡子
韓国ソウル生まれのマルチ・アーティストであるイ・ラン(이랑)と、詩人やエッセイストとしても活躍しているミュージシャンの柴田聡子によるコラボレーション。
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