歌のかたち

CDやレコード、カセットテープ。歌はいろんな「かたち」で聴き手の元にやってきます。歌だけでなく、ジャケットや歌詞カードのデザイン、素材、手触りにも目を向けてみると、つくり手のこだわりがもっと感じ取れるものです。インターネットでも手軽に歌を聴くことができるこの時代、それでも実物を手にしてよかったと感じる歌の「かたち」について目を向けてみるコラムです。

第5回　たけとんぼ『春はまだか / 旅の前』

フォークシンガーのような風貌、楽曲、歌声、そしてコーラス。まるで昭和からそのまま飛び出してきたかのような二人組のフォークバンド、たけとんぼ。初めてたけとんぼの楽曲を聴いた時、懐かしさと新しさがどちらも感じとれて驚いたのを覚えている。調べてみると二人は私と同世代だということが分かり、だからか！と納得。平成生まれが歌うフォークソングはとても新鮮で、聴くたびにドキドキした。

そんなたけとんぼの名曲『春はまだか』が収録されたカセットテープを手にして、私はさらにドキドキした。祖母の家のラックに積んであったような、はたまたサービスエリアのカセットコーナーに並んでいそうな、このあまりにも素晴らしいジャケット。楽曲はもちろんのこと、ジャケットデザインから写真、歌詞カードまで、こだわりがたっぷりと詰まっている。カセットテープ一つでこんなにも楽しませてくれるなんてすごい。

”この季節が終われば春はまた来るでしょう

冬の色あせた街も変わるでしょう

ほら少しずつ夜は短く

つぼみもすこしずつほら風にゆれたよ”

今日もラジカセから流れるこの歌に励まされ、やっと訪れた春をなんとか生きている。

▷収録曲『春はまだか』の視聴はこちら

たけとんぼ

1970年代の洋邦楽から影響を受けたアコースティックなサウンドと、コーラスワークが特徴の二人組フォーク・ロックバンド。

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