Vol.1  渡辺 沙百理さん(イベントプランナー)/後編

2021.08.20

一歩目二歩目

読みもの

『1歩目、2歩目の足跡』

 

さまざまな分野で活躍している大人たち。きっと一直線にまっすぐに、歩いて来た人ばかりではないはず。どうしてこの道に足を踏み入れたのか。どんな道のりを歩いて来たのか。これまでどんなきっかけや、出会いがあったのか。ふだんは中々聞けない、そんな「1歩目」「2歩目」のお話を聞いてみる企画です。

 

 

 

 

Vol.1 渡辺 沙百理さん(イベントプランナー)/後編

 

渡辺さんは、仙台を中心にイベントプランナーとしてさまざまなイベントを企画し、人やものが繋がる場をつくっています。そんな渡辺さんは、どうしてイベントプランナーになったのでしょうか。どうしてイベントプランナーという職業にたどり着いたのか、どんなことを考えて企画しているのか。渡辺さんのいまと、これからについても聞いてみました。

 

 

一生続けていく仕事だと思っていた

 

―13年も勤めた会社を退職しようと決めた時、どんなことを思い、考えていたのですか。

 

最後に勤めたのは石巻にある店舗で、震災後ということもあり、ボランティアや支援者、移住者など外から石巻へやって来る人が多くいました。その人たちは自分の意思で、一人の人間として石巻へやって来ているのに、私は会社員で、自分の意思とは関係なくただ配属が石巻だっただけ。そんな取り留めもないことを考えてもやもやしながらも、石巻で仕事をする中で出会う人たちに魅了されていきました。ちょうどその頃、ずっと続いていたハードな毎日に限界が来て、これまで働いてきたことの意味を見失ってしまたり。糸がぷつっと切れてしまったようでした。もういっそのこと、これは転機だと考え、思い切って退職する決断をしました。お客さまや取引先の人にも恵まれ、大好きな仕事ではあったんですけれどね。

 

―辞めてからこれをしようとか、何かその後の計画を立ててから退職に踏み切ったんですか。

 

仕事を辞めた時は何も決めていなかったし、考えてもいなかったです。一生この仕事を続けていくものだと思っていましたし、他になんの選択肢も考えていなかった。ただ、これからは意味のあることをやっていきたいと、漠然と思っていました。

 

―そこから、どのように現在のイベントプランナーのお仕事に繋がっていくのでしょうか。きっかけが気になります。

 

仕事としてイベントを企画することに出会ったはじめのきっかけは、仙台市内にあった「arne(アルネ)」という場所です。知人が自分の事務所の1階をコミュニケーションスペースとして運営していたもので、以前からお客さんとして遊びに行ったりしていました。そこでのイベントは、本屋、文房具屋、コーヒー屋、花屋など、さまざまなジャンルの店が集まる小さなマルシェのような場所。仕事も辞めて時間もあったので、初めは手伝いに行ったりしていて。その時、緩やかにお客さんがやって来るその空気感がとても心地よいと感じたんです。そしてなんとなく、やってみたら面白そうだな~と。

 

 

 

 

そして知人であるオーナーにそのことをぼそっと伝えると、「やってみたら」って言ってもらって。お金は入るのかな、仕事にしていけるのかな、誰にやり方教わればいいんだろう?とかいろいろ考えてしまいそうになったけれど、やってみなきゃわかんないと思って。それから1年くらい実験で、その場でのイベントを私が企画運営してみることになりました。これが初めてのイベント企画です。季節ごとにテーマを変えて、毎回5店舗くらいに出店してもらって。月2回くらいのスパンで開催していたので、これが結構大変でした。

 

―やり方もわからないまま始めて、月に2回開催ってすごいですね。

 

でもそれが逆に良かったと思います。毎回イベントの企画書をつくってオーナーにプレゼンして、厳しくしてもらっていたのでそれでだいぶ鍛えられました。当時は今よりもしっかり企画書を作っていたと思います(笑)。その分多くの事業者の方々にも出会えましたし、新しい繋がりもできました。1TO2BLDG.で働き始めたきっかけもここです。

 

 

 

 

―1TO2BLDG.がオープンした2017年8月から、毎月「イチと二市」というイベントを開催していました。その企画運営も渡辺さんが担当されていたんですよね。

 

そうです。ちょうど同じ時期に、イベントプランナーとしての仕事をしっかりと本腰を入れてやっていきたいと思い、「PLANNING LABORATORY」という屋号で開業届を出しました。Arneでの企画を続けていた中で、これからこのまま続けていっていいだろうか、それとも…と葛藤もあり相当悩みましたが、まずやってみることが大事!と思って。

 

働き始めた1TO2BLDG.内でのイベント「イチと二市」は、スタッフでありながらも「PLANNING LABORATORY」の個人事業として企画運営の仕事を任せてもらいました。例えば、クリスマスの「蚤の市」をテーマにした回。お花やグリーンを扱う事業者さんに集まっていただき、「イチトニ植物園」と題した回だったり。これまでの会場よりも比較的広いスペースだったので、たくさんのお客さんや事業者の方に集まっていただき、ここでもまた多くの繋がりが生まれました。

 

 

 

 

手探りの中で見つけた自分のテーマ

 

―それからもさまざまなイベントを企画して、人やものが繋がる場づくりに取り組まれていらっしゃいます。そんな中で、現在定期的に開催されている「量り売りマルシェ」というものが、なんだか気になります。

 

量り売りマルシェは、その名の通り量り売りで食材を販売する場です。昨年(2020年)春にコロナウイルスが蔓延した時にはお休みしてしまいましたが、2019年6月から食品ロス削減とプラスティックゴミ削減をテーマに二十四節気に合わせて月に一回開催しています。

 

きっかけは大崎市岩出山にある女性だけでつくるハムの会社「ジャンボン・メゾン」の社長とお会いしたことで、その方は自分が社長になり、ハムをその場で切って販売する「量り売り」での販売を始めたいと考えていたそうです。製造したハムを流通に乗せて販売するにはプラスチック包材でしっかりと包む必要があるけれど、それはお客さんの手に届けばすぐにゴミになる。だから、直接販売できるお客さんには、量り売りのスタイルで販売してみたい、と。ゴミのことなんて、私自身よく考えたことはなかったんですが、そんなお話を聞いてすぐに共感しやりたい!と思いました。それで、一緒にやってみましょうとスタートしたのが「量り売りマルシェ」です。

 

 

 

 

 

チラシもゴミになるので作らずにSNSで宣伝して開催したのですが、意外と抵抗なく容器を持参してくるお客さんが多くて驚きました。ゴミのことを意識する人は増えてきていると思いますし、時代にマッチしていたんでしょうね。こんな考えや行動が、世の中の当たり前になるように、少しずつでも広げて行きたいと思いました。とにかく楽しいイベントもいいけれど、暮らしの知恵や気持ちのいい取り組みを共有する場を作りたい、というのが私自身のテーマになって来たんです。

 

―イベントと言っても、目的や規模、スタイルはさまざまですよね。ここで見つけたテーマというものが、その前におっしゃっていた「意味のあること」をやりたいという思いにも繋がっているのかもしれません。そんな渡辺さんがこれからチャレンジしていきたいことや、目標などがあったらお聞きしたいです。

 

やってみたいことは昨年(2020年)からスタートした資源循環や捨てない暮らしの提案をする「tsugi」というプロジェクトの中での、コミュニティコンポストの取り組みです。生ゴミを土に返し肥料にして、野菜を育てて収穫する。ゴミも出ないし、資源が循環して気持ちいい。そんな取り組みを地域の人びとにも関わってもらいながら、チャレンジできたらと思っています。

 

この「tsugi」プロジェクトは量り売りマルシェを続けて来たから出たアイディアで、食材の量り売りはもちろん、器の金継ぎを習う会や冷蔵庫の余り物でピクルスを作る会などを企画し、捨てない暮らしのコツを共有する場として運営を始めました。これらの取り組みを通して近い将来、今発信していることが日常にある暮らしになっていることが目標ですね。こんな風に、これからも自分自身が関心を持つことに対して動いていきながら、そして必要とされるところに、必要とされるものや人を繋いでいくことをこれからも続けていきたいと思っています。

 

 

 

 

渡辺 沙百理(イベントプランナー)

宮城県大崎市生まれ。東北芸術工科大学生産デザイン学科卒業後、仙台市内のインテリアやアパレルショップを展開する会社に入社。13年間店長職や本部職に携わり、店舗運営や企画、国内外の仕入れを担当。 2016年に退職した後、知人が運営するコミュニティスペースでのイベントに魅了され翌年からイベント企画をスタートし、フリーランスのイベント企画業「PLANNING LABORATORY」を開業。ワクワクする気持ちを忘れずに、ヒトやモノ・コトを繋ぐ場づくりが好き。渡辺さんの活動や最新情報は、「PLANNING LABORATORY」のSNSをご覧ください。

 

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記事を書いた人

伊藤 優果

SURUCCHAスタッフ・ライター

宮城県仙台市生まれ。大学生の頃にウェブマガジンの取材記事を執筆し、ことばを形にして人へ伝える喜びを知る。卒業後は地元の印刷会社に就職し、営業職を経験。紙や印刷技術が持つ無限の可能性に魅せられ、印刷はひとつの表現方法であると考えるようになる。現在はブライトにて、シルクスクリーン印刷所「SURUCCHA」のスタッフや、ライターとして勤務。心がけていることは「一刷入魂」。

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