Vol.1 浜口陽三『びんとレモンと赤い壁』

2021.08.22

絵葉書美術館

読みもの

絵葉書美術館

 

私の手元には、残りの人生では到底使いきれない程の絵葉書がある。その時々の展覧会で良いなと感じた絵の記録として購入したり、誰かに便りを出すために買ったり。そんな絵を見て感じたことを気ままに綴る「絵葉書美術館」、ここに開館です。

 

 

Vol.1 浜口陽三『びんとレモンと赤い壁』

 

写真や映像で見ていた絵のイメージと、美術館で実物を目にした時の印象が最も異なった、画家浜口陽三の『びんとレモンと赤い壁』。ただの黒だと思っていた背景は、シン…とした静けさのある深くて温もりのある昏闇。その昏闇とグラデーションを持ちながらも、ポッと浮かんでいるような色彩が目を引く。

 

浜口陽三という画家は、独学で道具や技法を探求し、黒の濃淡の微妙な階調を細やかに表現する伝統的なメゾチントの世界を発展させた。色版を重ねて刷るカラーメゾチントの技術を新たに開拓した人である。まず、版全体に非常に細かな線や点を無数に刻んでざらつかせ、その後に表面を削って図柄を作っていく。黒は、無数の線や点の集積なので微妙な陰影のニュアンスを持つ黒になる。それが、肉眼と写真で観たものとの印象の違いをつくる理由だったと知る。実物は、その気の遠くなるような細かな作業の作用が、静かに伝わってくるのだ。

 

 

 

 

この絵を観たのは…

 

ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション

東京都中央区日本橋蛎殻町1-35-7

HP

 

記事を書いた人

黒須 若葉

CAFE MUGI スタッフ

宮城県角田市生まれ。これまで、数店舗の飲食店に勤務。社会人になり初めて働いたレストランで接客の楽しさを知り、自分なりのサービスを考えるようになる。飲食店は美味しい物だけでなく、接客でもお客さまに喜んでもらえることを実感し、そこに力を入れて働いてきた。また、人と人を繋ぐ役割も担える事を知り、できる限り良い縁を結べるように努めることもこの仕事の楽しさの一つだと思っている。現在はCAFE mugiでカフェ業務全般を担当。好きなものは、美味しいもの、本、絵。普段は本を読みながらのんびりしたり、お昼寝をしたり。観たい絵があれば日本中、ときには世界を移動して会いに行く。

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