Vol.2 山本 潤美さん(日々ノ道具 奥田金物)/後編

2021.09.17

一歩目二歩目

読みもの

『1歩目、2歩目の足跡』

 

さまざまな分野で活躍している大人たち。きっと一直線にまっすぐに、歩いて来た人ばかりではないはず。どうしてこの道に足を踏み入れたのか。どんな道のりを歩いて来たのか。これまでどんなきっかけや、出会いがあったのか。ふだんは中々聞けない、そんな「1歩目」「2歩目」のお話を聞いてみる企画です。

 

 

 

 

Vol.2 山本 潤美さん(日々ノ道具 奥田金物)/後編

 

山本潤美さんは、創業1844年(弘化元年/法人設立昭和26年)仙台では老舗の主に調理道具などを扱う「奥田金物本店」の直営店「日々ノ道具 奥田金物」を運営されています。山本さんのお父さまは奥田金物本店の社長、つまり奥田家の娘として生まれた山本さん。幼い頃から家業を継ぐ意志があったのか、それとも別の道へ進みたかったのか。3人の息子さんを持つ母としても忙しい日々を送っている山本さんは、これまでどんな道を歩み、「日々ノ道具 奥田金物」をオープンさせたのか。山本さんの「1歩目」「2歩目」について、お話を聞いてみます。後編では、新店舗オープンのきっかけ、実店舗の運営で大切にしていることと、その楽しさについて伺いました。

 

 

毎日お台所に立ってきたことは無駄じゃなかった

 

―同級生の方からの言葉によって会社(奥田金物本店)の強み、そして山本さんご自身の強みに気づくことができたと、前編でお話いただきました。具体的にその強みとは、どんなことだったのでしょうか。

 

会社の強みは、数多ある調理道具の中から本当にいい商品をセレクトして販売できるということです。私たちの会社は、調理道具を扱う問屋の仕事をしています。問屋の仕事自体は、いろんなメーカーから多くの商品を紹介してもらい情報を得て、幅広く商品を扱って、販売店に卸すというものなんですが、そこがポイントで。もし販売店という立場だったら、問屋がセレクトした商品の中からしか選べないし、メーカーさんの販売戦略のもと偏った情報が入ってきてしまうこともある。けれど問屋という立場にいるからこそ、幅広いメーカーの商品情報が次々と、そしてフラットに入ってくる。だからブランド名や人気商品だということにとらわれることなく、幅広い選択肢の中から本当にいい商品をセレクトできるんです。

 

私自身の強みは、毎日お台所に立ち調理道具を使う主婦目線も持ち合わせているので、使いやすい商品をセレクトできることだと気づきました。一般的に販売店は、ネームバリューがあるだけの有名なブランドの商品や、もしくは価格の安さを売りに出したりしがちですが、それって本当にお客さまのためにいいのかな?と思うんです。主婦目線だと、そう何回も買い替えたくないし、いいものをずっと使っていく方がいいよ!って。物を捨てずに済むし。最初に払うお金は高いかもしれないけれど、使い続ければコスパが上がります。道具が良ければ料理が苦手でも美味しく作れるんです。そんなことをお客さまに伝えられるような、価値のあるお店を持ちたいと思い始めました。すでに国分町にあった店舗ではそれを丁寧に表現することが難しいと思い、新しく出店する方向に動き出しました。

 

 

 

 

―子育てと仕事の両立に葛藤しつつも、その経験がここで生きてきたんですね!

 

ただただ日常の積み重ねではあるけれど、その中で「家庭料理は小さな文化」という思いを持ちはじめ、その文化を支えるのは私たちが扱っている商品なんだ、と今の仕事の取り組みの土台が培われたように思います。毎日お台所に立ってきたことは無駄じゃなかった、と。

 

 

説得力のある接客と佇まい

 

―お店のコンセプトやイメージができてから、どのようにセルバテラスでの出店に漕ぎ着けたのでしょうか。

 

奥田金物本店というと、どうしても問屋のイメージを持たれてしまうことが多かったんです。このままでは販売店として出店しづらいと思い、キッチン用品や調理道具、衣料品、雑貨などの生活用品をトータルで扱うセレクトショップとして、商業施設でのポップアップ出店を複数年、定期的におこないました。それが2014年頃ですね。いろんな商業施設に出店した中でも泉中央のセルバでの反響が大きく、2016年にセルバテラスがオープンするのと同時にテナント出店しないかと誘ってもらうことができました。

 

 

 

 

―スムーズに出店が決まったのかと思いきや、地道な努力があったんですね。こうしてセルバテラス内にオープンした「日々ノ道具 奥田金物」は、空間と店構えも印象的です。

 

お店のしつらえ、佇まいにはこだわりました。というのも、扱っているキッチン用品や調理道具は工業製品なので、常に価格競争の中にあります。ネットや量販店で探せば安く買えてしまうことがある。でも、私たちのお店ではセール価格では販売しません。セール価格で売るということは、その商品を作っている人に余計な負荷をかけることだと思っています。ユーザーのために開発を重ねた結果その売価が算出されるのだから、適正価格で販売しないとその商品もメーカーも残れません。そこで、適正な価格で買っていただくために、お客さまにその商品のメリットやデメリットをきちんと理解していただき、ブランド名に左右されず商品の本質を理解し、間違いのないお買い物ができるアドバイスをすることに努めています。ここに来れば失敗のない買い物ができると思ってもらいたいので、スタッフの知識と接客はもちろんですが、さらにお店の佇まいが商品の魅力にさらに説得力を持たせていると思っています。

 

 

実店舗の楽しさ

 

―山本さんの店づくりへの想いが詰まった店舗での買い物、それからスタッフの方の接客。実店舗での買い物には大きな価値がありますね。

 

最近いらっしゃったお客さまで、「やっぱりお店でのリアルな買い物はいいわ」と言ってくださる方がいました。店頭で実際に道具を手に取る、触れる、掴むとわかる感触があると思うんです。あとは、我々スタッフの説明が付随することによって間違いないと思ってくださる。例えば、使っている調理道具に何か不具合があって買い替えに来たお客さんがいたら、最初から買い替えを勧めることはせず、まずはその道具の不具合をよく聞いて、それならまずはこれで洗ってみてくださいとか、このネジを締め直せばまだ使えますよ、とかね。私たちが持っている知恵とか経験を直接お話しながら買い物できるのは、実店舗ならではだと思います。またキッチン用品の専門店がどんどん少なくなっている今、それは私たちの使命でもあると思っています。

 

―店舗でお客さまへ誠実に向き合っていらっしゃることがよく伝わってきます。買い物をするときにそんなアドバイスを聞けたら心強いだろうなと、お話を聞いていて感じました。

 

こうした経験や情報は、一緒に働いている若いスタッフたちにも共有をしています。それだけでなく、彼女たちにも商品を購入し実際に使ってみて、お店のインスタグラムで商品を紹介してくれて、若いからこそ気づくこともたくさんあると思うんです。これを繰り返すことによって接客にも生きてくると思うし。

 

最近はありがたいことにお店のスタッフにもファンがついているように感じていて、それがすごく嬉しいです。あとは、顔を見せに来てくださる方も。差し入れにおにぎりや、お惣菜なんかをいただいたり!昔の町にあった商店ってわけではないですけれど、こうしてふらっと遊びに来てくれるだけで嬉しいです。ただ商品を売り買いするだけでなくて、コミュニケーションを取れるってありがたいことだと思いますし、何より楽しい。

 

 

 

 

―オンラインショップにはない良さが、実店舗にあるよ!と。

 

その通りです。オンラインショップも、今のご時世必要です。でもお店でお客さまに伝えているようなことを文字に起こして掲載しようとすると、とっても長くなってしまって。こんなの誰も読まないよ!っていうぐらい(笑)。実際に話してやりとりをしている方が、不思議とすっと入ってくるんですよね。それがオンラインの難しさであり、実店舗の楽しさだと思います。

 

 

山本 潤美(日々ノ道具 奥田金物)

1967年仙台市生まれ。県内の大学を経て銀行に就職後、家業に就く。株式会社奥田金物本店金物では、営業職を経て店舗開発に携わる。2016年にセルバテラスに「日々ノ道具奥田金物」を開業。息子三人を育てながら仕事を続けるにあたり、子どもたちとゆっくりと一緒に過ごす時間は少ないが、「食事は子どもとの繋がり」と思い毎日朝晩、台所に立つ日々。

 

日々ノ道具 奥田金物

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記事を書いた人

伊藤 優果

SURUCCHAスタッフ・ライター

宮城県仙台市生まれ。大学生の頃にウェブマガジンの取材記事を執筆し、ことばを形にして人へ伝える喜びを知る。卒業後は地元の印刷会社に就職し、営業職を経験。紙や印刷技術が持つ無限の可能性に魅せられ、印刷はひとつの表現方法であると考えるようになる。現在はブライトにて、シルクスクリーン印刷所「SURUCCHA」のスタッフや、ライターとして勤務。心がけていることは「一刷入魂」。

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